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伊集院静「無頼のススメ」レビュー「自分で打ち止め」

「なんだか堂々巡りの人生で嫌だからなんとかしたい、と思うなら無頼という生き方がある」
という言葉で本書は始まる。
「無頼」という言葉には馴染みが薄い。
それはなにか漫画やフィクションの主人公のキャッチコピーで使われるもので、現実の人間の生き方としての「無頼」というものがしっくりこない。
それもそのはずで、僕らは生きたサンプルとしての「無頼漢」に巡りあうチャンスがなかなかない。
だから、最後の無頼派といわれる伊集院静の語る言葉は貴重だ。
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「愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない」伊集院静 レビュー「作家の氷」

苦い話を、なんでわざわざ読もうとするのだろう?

どうしてわざわざ金を払ってまで、人様の苦い話を読もうとするのだろう。
苦い話なら、自前で千夜を超すほど抱えてる。
全国に支店展開して売るほどに抱えているというのにだ。
理由も動機もわからぬまま、いつだってこの人の書いたものを一気に読み上げてしまう。

この話は、「なぎさホテル」のちょっと後、「いねむり先生」の時期を挟んで語られる伊集院静の自伝的小説。 Read More

「いねむり先生」伊集院静 レビュー 「やさしいロードムービー」

その人が
眠むっているところを見かけたら
どうか やさしくしてほしい
その人は ボクらの大切な先生だから

この序文が、この物語の「あたたかな」温度と「こまやかさ」を端的に物語っている。
「なぎさホテル」の人々との出会いによって再生し、新しい伴侶とともに始まった生活は、わずか二百日で死別というカタチで終わる。
ボロボロになった主人公と、誰からも愛されるチャーミングさをもつ先生。

この二人のロードムービーのような物語だ。 Read More

「なぎさホテル」伊集院静 レビュー 「誰かさんの救い」

「人は悲しみとともに歩むものだが、決して悲嘆するようなことばかりではない」

というプロローグで物語が始まる。

今の、壊れてしまった東京の暮らしを捨て去る前に、海だけは見ていこうとふらりと逗子に立ち寄った筆者と、そこで出会った人々とその中心に位置するホテルについて語られる物語だ。

縁もゆかりもない、どう見てもまともに金が払えなさそうな若者を、本当の家族のように、いや、本当の家族以上に受容してくれるホテルの人々。
宿泊料金の支払いを待ってくれるどころか、金まで貸して旅行に行くことすら勧めてくれる。
そんな人々と筆者の7年間に及ぶ物語が綴られている。

もしあなたが、現在「うまくいっている」のなら伊集院静という一人の作家が世に出るまでのストーリーとして楽しめるだろう。
しかし、もしあなたが「失意の中」にいるのであれば、とても客観的に読み進むことは出来ない。 Read More