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SUPER BOWL 2015 レビュー「Just One Play」

濃密なゲームだった。
さびれつつある王朝を守ろうとするものと、直接それを屠って自らの王朝を築き上げようとするものの戦いは、持ち味を出しあって五分と五分。
勝ち負けという結果を導いたのは、ただ本当にひとつのひとりのプレイだった。

Just One Play

試合終了まで25秒。
エンドゾーンまで1ヤード。
誰もがシーホークスの歴史に残る劇的な逆転劇を完結するのを見守る中、そのOne Playは起きた。
それを成し遂げたDBマルコム・バトラーは、王朝など知らない無名のルーキー。

バトラーはNFL選手のエリートコースとは程遠い道を歩んできた。大学でのキャリアはFBSやFCSではなく、2年制のコミュニティカレッジでスタート。一旦、チームから追放され、ファーストフードの店で働いていたこともある。

2012年にはNCAAディビジョンIIのウエストアラバマ大へ転校。2014年のドラフトではどのチームからも指名されなかったが、ドラフト外契約でペイトリオッツに入団することができた。

開幕ロスターに生き残ったバトラーはレギュラーシーズン11試合に出場。プレーオフは全3試合に出場したが、先発起用されたのは第15週のドルフィンズ戦1試合のみだった。プロ入り14試合目となったスーパーボウルで決めたキャリア初のインターセプトが、事実上ペイトリオッツの決勝プレーとなった。

引用元: ペイトリオッツのディフェンスに新ヒーロー誕生 |アメフトNewsJapan.

マルコム・バトラーは、腹を括ってピンポイントに飛び込んだ。
パスカットもタックルすることも考えず、ただボールを「ギる」ことだけを狙って。
その目にはレシーバーさえ映っていなかっただろう。

史上最悪のプレイコールなのか?

なぜRBマーション・リンチにボールを持たせなかったのか?

このプレイ直後から、内外から批判が殺到するプレイ選択。
しかし本当に史上最悪のプレイコールなのか?
残り25秒で攻撃のチャンスは3回。
まずパスを投げて、それが失敗であっても、残り2回は攻撃できる時間は残る。
ランを選択して、手詰まりになってからのパスは守りを容易にする。
なにせディフェンスは、エンドゾーンのせまいスペースさえ守りきればいいのだから。

これまでRBマーション・リンチは、102ヤードを稼いでるといっても、ペイトリオッツの尋常じゃない集まりにコンスタントにはゲイン出来ていなかった。
まして奥行きのある通常のエリアとゴールラインまで1ヤードの状況では、ディフェンダー全員の集まり度合いは変わる。

QBラッセル・ウィルソンが効果的にみせるキープという選択もある。
しかし、この日のペイトリオッツは、常にウィルソンを走らせなかった。
常にDEにウィルソンをケアさせ、それでも不十分と考えた場面では、LBをそのとなりにあげてまで執拗にマークしていた。
ゴール前でよくコールされるウィルソンのキープに、老獪な愛国者は充分な対策を練っていたはずだ。
だとすれば、いたずらにコールして、ロスでも食らって選択肢が狭まることは避けたい。

であるならば、インターセプトされにくいスラントのパスをまず選択するのは合理的なチョイスに思える。
びっしりとスクリメージを覆うフロントに比べ、DBはマンカバーのすっかすか。
最悪でもインターセプトは考えにくい。
QBラッセル・ウィルソンにも投げミスはない。
ドンピシャでレシーバーに収まるポイントに投げ込んでいる。

だから、プレイコールを非難するべきではなく、DBマルコム・バトラーを賞賛するべきなのだ。
オール・オア・ナッシングで腹を括って飛び込んだ彼のスーパープレイを、一体誰が予見できたというのか?

Another One Play

もしシーホークスがそのシナリオを完結させていたら間違いなく今年のOne PlayとなっていたであろうシーホークスのWRジャメイン・カースのミラクルキャッチ。
バウンド具合のラッキーさもあるが、最後まで集中力を切らさないその姿勢は見事だ。
この後それを上回るようなOne Playが生まれるなんて、その時は考えもしなかった。
間違いなくコレが今年のOne Playと確信していたのだが…

Worst One Play

そうして最悪のワンプレイもこの後起きた。
攻撃権を奪ったといっても、ペイトリオッツの自陣1ヤードで は、おいそれとニーダウンすることも出来ない。
ベリチックは、どんなプレイコールをするつもりだったのか?
オフェンスラインのど根性に賭けてスニークかランプレイで少しでも陣地を回復しようとしたのか?
それともターンオーバーを恐れて、なるべく時間をかけてエンドゾーンでニーダウンしてあえてセイフティーの2点でおさめ、その後守りきるという選択だったのか?

しかし全てはディフェンスの反則で吹き飛んでしまった。
反則の多いチームは、勝負どころで、その轍を踏んでしまった。
そうして自ら、わずかにはあった勝利の可能性を捨て去ってしまった。
その後おこる乱闘騒ぎという後味の悪さも付け加えて。
しかし、あれだけの乱闘で、シーホークス側だけ退場者が出るというのも解せないが…

実質的なOne Play

あえて結果論的に、勝者と敗者というコントラストでOne Playを比較するなら、DBマルコム・バトラーの光に対して影はシーホークスのDBアール・トーマスのプレイだろう。
オール・オア・ナッシングで腹を括って飛び込んだDBマルコム・バトラーに比べ、躊躇してやすやすとパスを通させてしまったDBアール・トーマスのプレイは残念だ。
最悪でもパスカット出来たのではないだろうか。
ここが最悪でもFGで終わっていれば…
勝敗の分かれ目という点では、このプレイこそ実質的なOne Playかもしれない。

堅守がウリのシーホークスが勝負どころでミスを犯し、オフェンスがウリのペイトリオッツが無名の新人ディフェンダーによって勝利を勝ち取る。
皮肉な結果というには、運命の女神のシナリオは凝りすぎている。

あらためてOne Play

あらためて、フットボールは、ひとつひとつのプレイの積み重ねということを痛感させられる。
その勝敗も、シーズンも、もっというとそのキャリアさえも。
ひとつのプレイで無名の若者は英雄となり、ひとつのプレイで若いチャンピオンチームを作り上げたヘッドコーチは戦犯扱いだ。
コントラストの強すぎる明暗は、残酷ささえ感じるほどだ。

NFLが事前に作成した第1回から第48回まで各スーパーボウルを代表するワンプレイを一挙に編集したビデオも、今となっては予言めいて感じる。

「One Play」NFLが各スーパーボウルを代表する名シーン動画を公開中 | ココロクロニクル
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カムバックはこれから

ゲーム中、シーズン中、見事にカムバックしてきたシーホークスは、これからシーズンをまたいでカムバックする姿を見せなければならない。
たったワンプレイで勝敗はついたが、たったワンプレイでこれまで積み上げたものを失ったわけじゃない。
しかし、その心配には及ばないようだ。
QBラッセル・ウィルソンの強いメンタルは、いささかも失われていない。
直後に彼は、「進化する」と宣言している。
今年のスーパーボウルを前篇とする超大作のシナリオが、後編となる来年のスーパーボウルで完結することを期待しよう。

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「タフでクールで そしてヒューマンタッチ」Reblogger in Tokyo