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『007 スカイフォール』見た人のためのレビュー(3) MI6編 「理想的な上司と面倒な若者」

シリーズには欠かせない3人のキャラクターが満を持して登場。
しかし、それぞれのキャラクターは、これまでとは違うニオイを放っている。
ミス・マネーペニーは、「ミス」と呼ぶにはカービン銃が似合いすぎるし、Mは銃撃戦に参加する。
それになにより、キュートな老人だったQは、面倒な若者に生まれ変わっている。

マネーペニー

Moneypenny_(Naomie_Harris)_-_Profile

髭を剃ってあげた後の展開は、ぼかされたまま。。。
ただ、撃ったものと撃たれたもの同士。
お互いが生存し続けている状況はマレだ。
たとえ誤射とはいえ、そのネタで笑いあいながら共有できるあたりは特殊な関係だ。
マネーペニーは007を誤射したことにより現場を外され、ボンドは撃たれたことにより生命と職務への情熱を失いそうになる。
その体験を共有しながら乗り越えていく稀有な経験を共有するもの同士。
男と女の親密さだけとも少し違う、ボンドとマネーペニーの独特の雰囲気は何故醸成されたのかは理解できた。

新Mギャレス・マロリー

skyfall-+gareth+mallory+ralph+fiennes+image01

マネーペニーが最後に言う。
「新Mマロリーはいい人よ」
始めてその素性と名前が明かされたM。
捕虜経験もした苦労人。
マネーペニーの言葉を借りるまでもなく、いい人、優しい男であるのはよく分かる。
旧Mを慮って、経歴が傷つかないうちの引退を勧め、能力が不足しているボンドの危険を心配し、復帰に反対する。
コレがいい人でないわけがない。
状況の解決のみを最優先に、ボンドの身の危険など鑑みない旧Mとはまったく立ち位置が違う。
諮問委員会でも、建前を述べ続ける女性大臣に、質問から演説に変わってしまった彼女の発言をスマートに止める柔らかさを持っている。
なにより、現場でボンドとタッグを組んで銃撃戦を行った初のMである。
ボンドにしても母親と同じアルファベットを持つ旧Mに対するときは、不機嫌な母親に呼びつけられたように居心地が悪そうだった。
だから、今回ボンドは始めて、精神的にも上司という存在に遭遇したのではなかろうか。
現場での捕虜という苦労も知っていて、いざ銃撃戦になれば腕の立つパートナーになり、目的達成のためにQ達の越権行為を見逃しアドバイスするまでの柔らかさも持っている。
ボンドにとっては、理想的な上司といえるのではないだろうか。

Q

Q

年上のあのしわくちゃのQになら甘えることが出来た。
しかし、遥かに年下の相手にはそれは望めそうにない。
そもそもあの若造は、ダブルオーエージェントたちを、せいぜい現場で引き金を引くだけの端末くらいにしか見ていないのだから。
切れた唇から滲む血を味わいながら引き金を絞るダブルオーエージェントたちりより、特製マグでコーヒーを味わいながらクリックひとつでもっと大きな成果を出せると、そのQは信じている。
だから、ぱっとしない機能がついたワルサーとたかだか無線発信機を渡されたボンドは、ひどくみすぼらしい気持ちになる。
Qにしてみれば、前世紀の遺物のやることにはこの程度の装備で十分と自信をもって渡している。
ただし、そこに不足はない。
過不足なくしっかりと100%の効果を出すあたりが、憎らしい。
古いQのややオーバーテクノロジー的なお茶目さはない。
しかし、馬鹿にしていたペン型爆弾だって、あっさり作りそうだ。
それが必要であると自分で納得するのなら。
いや、プライドが高そうなあの若造は、同じ機能を果たせるもっとよい物を差し出しそうだが。
ボンド自身への能力に完全な信頼を置いていない優秀な若者。
このQとの信頼関係を築いていく苦労は、新Mという理想的な上司を得たボンドの唯一の頭痛の種になるのかもしれない。

Filed under: 007

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「タフでクールで そしてヒューマンタッチ」Reblogger in Tokyo

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