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『007 スカイフォール』見た人のためのレビュー(1) ジェームズ・ボンド編 「ドラム缶の中の2匹のネズミ」

ドラム缶の中に閉じ込められたネズミ達は、生き残るために共食い競争を繰り広げる。
ボンドとシルヴァという優秀な二匹のネズミは、共食い競争を勝ち残り続けるうちに、それ自体へのモチベーションをなくしていった。
そんな時に必然として発生したMI6からの、結果としての裏切り。

敵味方が曖昧な世界であることを百も承知である二人は、たとえMI6に裏切られようと眉一つ動かさないだろう。
その信頼関係は、サーモグラフィーに写した所でせいぜい緑色が精一杯の温度だろう。
しかし、Mとは、サーモグラフィーに赤々と反映されるような種類の信頼関係が結ばれている。

そのMに見捨てられた二匹のネズミ。

シルヴァは、そのMに命を見捨てられた。
独自に中国にハッキングを仕掛けた彼と引き換えに中国政府に捕虜を解放させた。
見捨てられたことに絶望したシルヴァは機密を漏らすことなく死ぬことを選ぶ。
しかし、仕込んでいた毒薬では足りず、苦しみを味わっただけで死ぬことはかなわなかった。
そして彼は、死ぬことを果たそうとする。
彼の精神的な土台であるMを道連れに。

ボンドは、Mにその能力を見捨てられた。
列車上で犯人と格闘するボンドに任せっぱなしにできず、マネーペニーに射撃を命じたM。
ボンドは、撃たれた事実より、全面的に任せてもらえなかったことにプライドとココロを失う。 もとより、この業界に長くいつづけることに疑問が生まれ始めていたのだ。

一旦、社会的にもそのココロも死亡した二人のエージェントは、表と裏、陰と陽で、前進する動機を見つける。

死のうとして死ねなかったシルヴァは、思い残すことなく死ぬための大掛かりな準備を始めた。
そう、彼はいまだに毒薬カプセルを噛みっぱなしのメンタリティなのだ。
全ては、自らの死に至るまでの過程に過ぎない。

ボンドは、酒に溺れながら、何もココロに沸き起こらない日々をやっつけていた。
時間を潰すために酒を飲み、生きていることを確認するために自ら毒サソリを侍らす。
空っぽのままの自分。
薬物や酒に手を出してしまう以外、何の意欲もわかない日々。
しかし、シルヴァというもう一匹のネズミの登場が、結果的にボンドにモチベーションを与える。
自分が何かをしたいというモチベーションより、自分以外の誰かを今すぐ守らなければというモチベーションは遥かに強力で、そこに躊躇は生まれない。
新Mマロリーに「なぜ、生き返った?死んだままでいれば平穏な日々が送れるのに」という問いかけにココロは全く動かない。
平穏な日々というものが酒と薬物でやっつけていた例の日々のことであれば、そんなものにはもう飽き飽きしてしまった。
だってそれはまさしくココロが死んでいた日々だから。
だから、森の中で生きるより、ドラム缶の中に戻ることを決意したのだ。

シルヴァがボンドに問いかける。
「なぜ、ドラム缶から出て森にいかないんだ?」と嘲笑しながら。
しかし、これは全く自分自身に向けたものであることは明白だ。
2人ともドラム缶の中でしか生きられないことを知っている。
あるいは死ぬことすらも。

カジノ・ロワイヤルと慰めの報酬 の前二作は、ジェームズ・ボンドがダブルオーセブンになっていく物語であった。

『007 スカイフォール』ジェームズ・ボンドの帰還 | COCOLO CHRONICLE

ダニエル・クレイグ 以前のボンドは、ほんとうにどんな目にあおうとも、英国人しか笑わないジョーク(それはすなわち英国人以外にはただの皮肉であるのだが)をつぶやくだけで、心底本人が傷つくことはなかった。


本作スカイフォールでは、ジェームズ・ボンドがダブルオーセブンであり続けることを決意する物語だ。
いや、最早、ダブルオーコードなしの生き方を選択することが出来なくなっている事実と、しかもその生き方を気に入っていることに気づくボンド。

だから、次の任務を、「喜んで」と深く穏やかな笑顔で受け入れる。
彼はようやくダブルオーで在り続ける理由を見つけたのだ。

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「タフでクールで そしてヒューマンタッチ」Reblogger in Tokyo

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